実績紹介

水力発電

八ッ場発電所 実施設計業務委託

2018年度 / 群馬県吾妻発電事務所

業務の概要

本業務は、⼋ッ場発電所の建設にあたり、最適な発電所の設計と、既存設計で未実施の「基本設計」及び「詳細設計」を⾏うことを⽬的とした業務でした。
放⽔庭については、⽔⾞形式が両掛け⽔⾞であることから放⽔庭を左右対称とし、⽔⾯の安定性が確保できる構造としました。

発電計画の概要

本設計業務を受注した段階で発電所の1次掘削は完了し、ダム本体も着⼿した状態でした。また、当該地点は「名勝吾妻峡」に指定されており、様々な制約を受ける地点になります。

① 基本設計の⾒直し

既存の設計資料成果、設計図書及び発注者からの指⽰事項をもとに、設計対象設備における基本事項(位置、規模、機能、形状及び材質)の確認‧整理を⾏い、必要性、経済性及び施⼯性などを総合的に勘案し、必要に応じて⽐較検討を⾏ったうえで、最適な基本事項の検討を再度⾏いました。

② レイアウト設計

可能な限り地上露出部を少なくしたいとの要望があることを踏まえて発電所のレイアウト設計を⾏いました。地上に露出する要素は、搬⼊出⼝、換気設備及び放⽔路制⽔ゲート⽴坑等のみとし、これらの設備を集約し地上露出部をコンパクトにまとめました。

③ 詳細設計

基本設計修正案の構造を基に、発電所本体構造の仕様決定を⾏いました。発電所本体構造は、地上露出要素を最⼩限に抑えるレイアウトとしたことから⼤部分は地下埋設構造となりました。

発電所の構造は⽴坑と搬⼊⼝以外は地下埋設型式とし、地下2階を⽔⾞発電機室、地下1階を配電盤室及び主変圧器室としました。中間スラブについては施⼯性が優位な床版構造とし、上部スラブは構造的に有利な⾨型の梁構造としました。

地下構造は、最⼤埋設深さが約40mと深いことから、地下2階部分は周辺岩盤までコンクリートで埋戻しを⾏い、施⼯性および安全性を向上させました。

また、地下1階に配置する重量物(主変圧器)は中間スラブ上に設置することが困難であったため、上述したコンクリート基礎に⽀持させることとしました。

放⽔庭については、⽔⾞形式が両掛け⽔⾞であることから放⽔庭を左右対称とし、⽔⾯の安定性が確保できる構造としました。

八ッ場発電所 実施設計業務委託
八ッ場発電所 実施設計業務委託
⼋ッ場発電所02
上流側から撮影(中間スラブ)

担当者から

近年は、農業用水を活用した小水力発電所の設計を主に担当しており、今回のような発電出力が10,000kW以上の新設発電所設計は初めての案件でした。

今回の業務は、大規模な工事であるため施工性・安全性・工期短縮等を含めた施工計画の立案に配慮しながら設計を行いました。

実際に工事が始まると様々なトラブルがあり、設計の難しさを痛感しましたが、適切に対処を行う事により工事は問題なく進んでいる状況です。

今後、現状の水力発電所の開発状況を考慮すると、今回の規模程度の発電所計画は多くないと思われますが、既設発電所のリプレースには今回の設計ノウハウが生かせると思いますので、今回以上の良い設計ができるよう努力したいと思います。


第二土木部 荒本 清之